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更新日:2024/7/19

介護事業者の現状と未来:倒産増加が示す課題と解決策

2024年上半期の介護事業者の倒産件数が過去最多となる81件に達し、介護業界は深刻な危機に直面しています。

これは、介護保険法が施行された2000年以降で最多となり、コロナ禍の2020年に記録された58件を大きく上回りました。

護に携わる皆さんにとって、この現状はどのように受け止め、どのように対応すべきでしょうか。 

介護業界の倒産からみる諸問題

まず、倒産件数の内訳を見てみましょう。

「訪問介護」が40件

「通所・短期入所」が25件

「通所・短期入所」が25件

と、いずれも上半期として最多を更新しています。特に訪問介護の倒産が顕著であり、その背景にはいくつかの要因が挙げられます。

◇倒産の背景と原因

①深刻な人手不足

介護業界は以前からヘルパーなどの介護職員の高齢化と採用難が続いていました。コロナ前からの人手不足がさらに悪化し、他業種の賃上げが加速する中で、介護業界の労働条件は相対的に劣勢となっています。そのため、人材確保が難航し、業績低迷によって必要な人員を増やせない事業者が多くなっています。この悪循環が、倒産の一因となっています。

 

②物価高の影響

ガソリン代や光熱費、介護用品の価格が上昇する中で、それを利用料金に転嫁できない事業者が多いのも現状です。コスト増加に対応できず、業績が悪化するケースが目立ちます。特に小規模な事業者ほど、この影響を受けやすく、倒産リスクが高まっています。

 

③介護報酬の改定

2024年度の介護報酬改定ではプラス1.59%の増加がありましたが、訪問介護の基本報酬は引き下げられ、他のサービスも期待ほど上がらなかったとの声が多く聞かれます。このため、経営の安定化が図れず、倒産に至るケースが増えています。

 

◇介護事業者の現状

2024年上半期の倒産では、売上不振が約8割を占め、小規模事業者が特に影響を受けています。従業員10人未満の事業者が63件、資本金1千万円未満が71件と、小規模・零細事業者の倒産が目立ちます。しかし、負債1億円以上の倒産も増加しており、中規模事業者にも影響が広がっています。

また、異業種からの参入や新設法人の増加により、競争が激化している点も見逃せません。

例えば、日本生命保険によるニチイホールディングスの買収など、異業種からの参入が進み、介護業界全体の競争環境が厳しくなっています。このような状況下で、従来の経営手法では対応しきれない事業者が増えているのです。

 

◇未来への展望と対策

介護事業者の倒産増加は、地域社会全体にとって大きな問題です。特に、訪問介護や通所介護といった在宅サービスの減少は、地域の高齢者に直接的な影響を及ぼします。そこで、以下の対策が求められます。

 

①介護報酬の再評価

国や自治体には、介護報酬を臨機応変に見直す仕組みを検討することが求められます。特に、人手不足や物価高の影響を受けやすい訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービスについて、適切な報酬設定が必要です。

②公設サービスの強化

自治体による公設サービスの強化も重要です。例えば、社会福祉協議会などに業務委託する形で、公設の介護サービスを提供し、地域の高齢者を支える基盤を強化することが求められます。

③人材確保と処遇改善

介護職員の処遇改善を進めるとともに、介護職の魅力を高める取り組みが必要です。他業種と競争する中で、介護職の労働条件を改善し、人材を確保することが不可欠です。

これには、近年、外国人技能実習生や特定技能の導入も進んでいます。

【※今まではサービス付き高齢者向け住宅等、訪問介護とされる業種には導入が出来ませんでしたが、今後導入が可能となるよう話が進んでいます。】

 

◇介護現場からの声と取り組み

介護現場では、日々の努力と工夫が求められています。例えば、神奈川県厚木市のデイサービス運営会社では、光熱費の節約や業務効率化を図りながら、利用者へのサービス提供を続けています。しかし、こうした努力だけでは限界があり、制度的な支援が必要です。

 

また、利用者の声も重要です。例えば、腰の痛みから通所介護を利用していた65歳男性の利用者は、介護サービスの休止により、体力や身体機能の維持に不安を感じており、高齢者が安心して介護サービスを利用できる環境を整えることが、社会全体の課題となっています。

 

◇結論

介護事業者の倒産増加は、深刻な人手不足と物価高の影響を受けており、地域社会全体にとって大きな問題です。しかし、国や自治体、そして介護現場の努力により、この危機を乗り越えることは可能です。介護に携わる皆さんは、厳しい状況の中でも前向きに取り組み、地域の高齢者を支えるための基盤を強化する役割を担っています。共に未来を見据え、より良い介護環境を築いていきましょう。

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