更新日:2026/10/6
【2026/2027】ワクチンだけじゃない!医療機関のインフルエンザ対策と、休める職場のつくり方

「今日、受付が一人お休みです」。朝一番のこの連絡で、電話対応や予約の調整が急に慌ただしくなる――そんな経験はありませんか。インフルエンザ対策は、個人の健康管理であると同時に、患者を守り、診療を止めないためのチームづくりでもあります。
2026年は例年より早く、
8月の第34週に全国の定点当たり報告数が流行入りの目安を超えました。これは2025/26シーズン末のデータです。2026/27シーズンに向けた備えは、ワクチンを手配して終わりではありません。「誰が接種しやすいか」「体調を崩したら誰に連絡するか」「欠員をどう補うか」まで考えることが、医療機関のBCP(事業継続計画)につながります。

今季のワクチン、「変わったこと」と「変わらないこと」
「4価から3価へ」。一つ減った理由は?
国内の不活化インフルエンザHAワクチンは、2025/26シーズンから3価になり、2026/27シーズンもA型2株(H1N1、H3N2)とB型ビクトリア系統1株の構成です。外れたB型山形系統については、
厚生労働省の資料で2020年3月以降、自然感染が確認されていないと整理されています。WHOの推奨を踏まえた変更であり、「山形系統の絶滅が確定した」という意味ではありません。
「成分が一つ減ったなら、供給にも余裕ができる?」と思うかもしれません。しかし、価数の変更には製造工程や原材料の調整が必要で、3価化だけで製造効率の向上や不足の解消が保証されるわけではありません。厚生労働省が示した今季の
供給見込みは約5,190万回分(2026年8月時点。不活化ワクチンと経鼻ワクチンの合算)。近年の平均使用量を上回る見通しですが、各施設では昨季の実績を見ながら必要量を発注し、期限と在庫を管理しましょう。
「注射はこわい」に、経鼻ワクチンという選択肢
小児・若年層の患者さんには、経鼻弱毒生ワクチン「フルミスト点鼻液」も選択肢です。国内の対象は2歳以上19歳未満。左右の鼻に噴霧し、1シーズンに1回接種します。針を使わない点は、注射を怖がる子どもと保護者に説明しやすい特徴です。一方、19歳以上の職員には使えません。

院内運用のワンポイント:経鼻製剤は生ワクチンです。免疫機能に明らかな異常がある人や妊娠が明らかな人などは接種不適当で、重度の喘息・喘鳴がある場合も慎重な判断が必要です。
添付文書は、接種後1~2週間、重度の免疫不全者との密接な接触を可能な限り避けるよう説明を求めています。不活化ワクチンとは問診・接種後の案内を分け、製品ごとの保管条件も確認しましょう。
「接種できたらいいな」を、接種しやすい仕組みに
費用補助は公平に。税務は「全員対象ならOK」と決めつけない
職員の接種費用を施設が全額または一部負担すれば、費用面のハードルを下げられます。常勤・非常勤を問わず、雇用する職員の希望者に公平な利用機会を設けること、補助額を社会通念上相当な範囲にし、対象・上限・精算方法を規程に明記することが、福利厚生費としての処理を検討する際のポイントです。役職者だけの制度にすると、給与課税の問題が生じる可能性があります。
ここは少し丁寧に整理しましょう。「全員に案内した=必ず給与として課税されない」ではありません。また、職員の給与所得に関する非課税の話と、予防接種サービスの消費税は別です。個人事業主である院長本人、派遣職員など雇用関係が異なる人、特殊な補助方法を含む場合は、費用負担や領収書の記録も踏まえ、税理士等に確認してください。
スタッフ接種は「まとめて予約、部署ごとに分散」
院内にスタッフ向けの接種枠を用意すると、外部予約や移動の手間を減らせます。ただし、同じ部署の全員を同日に接種するより、部署ごとに日程をずらす方が、診療や接種後の体調変化に対応しやすくなります。
接種は、体調不良による欠勤――アブセンティズム――への対策の一つですが、欠勤を必ず防ぐものではありません。接種を受けられない人や希望しない人に不利益を与えず、日々の感染対策も続けましょう。
もしスタッフが発症したら? 迷わないための「三つの約束」

1.連絡と休養を最優先にする
発熱や咳が出た職員が「人が足りないから」と無理に出勤しなくて済むよう、連絡先、引き継ぎ方法、患者への案内担当を先に決めておきます。管理職が休養を優先する姿勢を示すことも、ルールを機能させるうえで大切です。
2.復帰の目安を決め、学校のルールと混同しない
学校保健安全法施行規則では、インフルエンザの出席停止期間を「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまで」(幼児は解熱後3日)と定めています。医療機関がこれを職員の出勤再開を検討する参考目安の一つとすることは可能ですが、成人の医療従事者に直接適用される法定の出勤停止期間ではありません。
3.休暇と応援要員をセットで準備する
特別休暇を設けるなら、有給・無給の別、対象日数、連絡・復帰手順を就業規則等に明記します。本人が希望する年次有給休暇は案内できますが、会社側が一方的に消化させる前提にはできません。また、就労可能な職員に施設側が休業を命じる場合は、休業手当の要否を個別に確認する必要があります。
そして、休む人を支えるには、残る人を支える準備も必要です。診療科・病棟・受付ごとの優先業務、応援に入れる職員の連絡網、予約変更の案内手順を共有しておきましょう。「休んで大丈夫」と言えることと、誰か一人に仕事を集中させないことは、同じ対策の両輪です。
まとめ:今週、まず確認したい三つのこと
•ワクチン:今季の接種方法、予約枠、必要量と在庫を確認する。
•ルール:体調不良時の連絡・休暇・復帰基準を見直す。
•チーム:欠員が出たときの優先業務と応援体制を共有する。
最新のワクチン情報を知ることと、安心して休める職場をつくること。どちらも、患者を守り、医療機能を維持するための備えです。小さな取り決めを今のうちに重ねることが、忙しい季節の現場を支え、スタッフが長く働きたいと思える環境にもつながります。






