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更新日:2025/11/28

新しい超音波技術で遠隔部位の腫瘍まで縮小に成功 ―メスを使わない、体に優しいがん免疫療法の可能性― がん治療に革新をもたらす「Trigger HIFU」とは

皆様こんにちは(^^)/

今回は従来のメスを使う治療法や、化学療法とは異なる、メスを使わない新しい治療法についてご紹介したいと思います。

医療も日々進歩していますので、「この間までは無かった新しい治療法が」なんて事もあり得る事なので、是非ご一読頂けたらと思います<m(__)m>

東京薬科大学とソニア・セラピューティクス株式会社の共同研究により、体を傷つけることなく、治療した部位だけでなく遠隔部位の未治療腫瘍まで縮小させる新しい超音波技術「Trigger HIFU」の効果が実証されました。この画期的な研究成果は、国際学術誌「International Immunopharmacology」に掲載され、がん治療における新たな選択肢として大きな注目を集めています。

従来のがん治療は、外科手術や放射線療法などの局所治療が中心でしたが、体への負担が大きく、特に転移したがんへの対応が困難という課題がありました。化学療法は全身に作用するものの、強い副作用や効果の限界が指摘されてきました。今回の研究は、こうした課題を克服する可能性を秘めた非侵襲的治療法として、医療・福祉業界はもちろん、がん患者さんやそのご家族にとっても希望となる成果です。

Trigger HIFUの革新的な3つのポイント

1. 治療していない遠隔部位の腫瘍も縮小する「アブスコパル効果」

最も注目すべき点は、治療を行った部位の腫瘍だけでなく、治療を行っていない遠隔部位の腫瘍まで縮小させることに成功した点です。この現象は「アブスコパル効果」と呼ばれ、局所的ながん治療が免疫系を活性化させることで、全身のがん細胞に対して効果を発揮します。

マウスを用いた実験では、右側の腫瘍のみにTrigger HIFU治療を実施したところ、治療していない左側の腫瘍も有意に縮小することが確認されました。これは、治療により活性化されたCD8陽性T細胞(キラーT細胞)が全身を巡り、遠隔部位のがん細胞を攻撃するためです。実際、CD8陽性T細胞を除去する実験では、未治療側の抗腫瘍効果が完全に消失したことから、この細胞がアブスコパル効果に不可欠であることが証明されました。

2. 非侵襲的でありながら強力な免疫応答を誘導

Trigger HIFUは、体外から超音波を集束させて腫瘍を破壊する治療法です。メスを使わず、皮膚を切開することもないため、患者さんの体への負担を大幅に軽減できます。

従来の強力集束超音波(HIFU)は、主に60100℃の高温で腫瘍を熱凝固させる方式でした。しかし、この高温は免疫を活性化する重要な分子を変性させてしまい、免疫応答を抑制する可能性がありました。一方、Trigger HIFUは高強度の短パルスでキャビテーション気泡を発生させ、その後の低強度持続波で気泡を維持するという独自の方式を採用しています。この「適度な熱」と「気泡振動による機械的効果」のバランスが、免疫を活性化する物質を保ちながら腫瘍を破壊できる鍵となっています。

3. 免疫チェックポイント阻害剤との併用で相乗効果

研究では、Trigger HIFU治療後にPD-1を高発現する疲弊したT細胞が増加することが観察されました。そこで、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体と併用したところ、単独治療を大きく上回る抗腫瘍効果が得られました。

この結果は、Trigger HIFUが既存の免疫療法と組み合わせることで、さらに効果を高められる可能性を示しています。すでに免疫チェックポイント阻害剤による治療を受けている患者さんにとって、Trigger HIFUは治療効果を引き上げる新たな選択肢となり得ます。

 

Trigger HIFUが免疫システムを活性化するメカニズム

Trigger HIFUによる治療効果の背景には、精密な免疫学的メカニズムがあります。

腫瘍が破壊されると、腫瘍細胞は免疫原性細胞死を起こし、DAMPs(傷害関連分子パターン)と呼ばれる物質を放出します。このDAPMsが免疫系の警報となり、樹状細胞を活性化させます。樹状細胞はがん細胞由来の抗原をCD8陽性T細胞に提示し、全身性の抗腫瘍免疫応答を開始させます。

研究グループの詳細な解析により、治療側だけでなく未治療側の腫瘍においても、CD8陽性細胞傷害性T細胞とCD11c陽性樹状細胞が有意に増加していることが明らかになりました。さらに、腫瘍内には15種類の異なるT細胞サブセットと8種類の樹状細胞サブセットが存在し、特にエフェクターT細胞やセントラルメモリー様T細胞が顕著に増加していました。これらの免疫細胞が協調して働くことで、強力な抗腫瘍効果が生まれるのです。

どんな患者さんに期待できるか

Trigger HIFUは、以下のような患者さんへの応用が期待されます。

手術が困難な患者さん

体の深い場所にある腫瘍や、重要な臓器に近い腫瘍で外科手術が難しい場合、Trigger HIFUは非侵襲的にアプローチできる選択肢となります。

体への負担を減らしたい患者さん

高齢の方や持病がある方など、大きな手術に耐えられない場合でも、体を切らずに治療できるため、QOL(生活の質)を保ちながら治療を進めることができます。

転移があるがん患者さん

複数の場所にがんが広がっている場合でも、一箇所を治療することで全身に免疫応答が広がり、遠隔部位の腫瘍にも効果が期待できます。

免疫療法を受けている患者さん

すでに免疫チェックポイント阻害剤による治療を受けている方は、Trigger HIFUとの併用でさらなる治療効果の向上が見込めます。

医療・福祉現場への影響と今後の展望

医療現場にもたらす変化

この新しい治療法が実用化されれば、医療機関にとって低侵襲治療の選択肢が大きく広がります。入院期間の短縮や病床効率の向上にもつながり、医療資源の有効活用が期待できます。また、これまで治療選択肢が限られていた症例にも対応可能になることで、より多くの患者さんに希望を提供できるでしょう。

医療従事者にとっては、がん免疫療法に関する知識のアップデートが求められます。Trigger HIFUのようなメカニズムを理解し、既存の治療法との最適な組み合わせを考えることが、より効果的な治療計画の立案につながります。

今後の研究展開

本研究はマウスを用いた基礎研究段階ですが、今後は大腸がん以外のさまざまな種類のがん(肺がん、膵臓がん、肝臓がんなど)でも同様の効果が得られるかを検証していきます。また、化学療法剤や他の免疫療法薬、がんワクチンなどとの組み合わせについても研究が進められる予定です。

臨床応用に向けては、安全性の確認や最適な治療プロトコルの確立など、慎重なステップを踏む必要がありますが、この技術が実用化されれば、多くのがん患者さんに新たな治療の選択肢と希望をもたらすことが期待されます。

 

まとめ体に優しく、効果的ながん治療の未来へ

Trigger HIFUは、「体を傷つけずにがんを治療する」という理想に大きく近づく技術です。治療した部位だけでなく、遠隔部位の腫瘍まで縮小させるアブスコパル効果は、転移がんに悩む多くの患者さんにとって希望の光となるでしょう。

医療・福祉に携わる私たちにとって、こうした最先端の研究成果を知ることは、患者さんやそのご家族により良い情報提供を行うために不可欠です。がん治療の選択肢が広がることで、一人ひとりの患者さんに最適な治療を提案できる可能性が高まります。

今後も、この革新的な技術の進展に注目し、患者さんの未来により良い治療選択肢を提供できるよう、情報を追い続けることが大切です。

参考文献
Rui Tada, et al. “Cavitation bubble-assisted high-intensity focused ultrasound induces abscopal immune responses” International Immunopharmacology, Volume 166, 2025

研究機関
東京薬科大学
ソニア・セラピューティクス株式会社

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