更新日:2025/2/18
テオフィリン供給停止がもたらす具体的な影響と課題— 治療現場への影響と、今後の対応策を考える —

第2回:医療現場に広がる混乱、その先にある課題とは?
■ 供給停止がもたらす影響が現場で現実に
前回のコラムでは、テオフィリン徐放性製剤(テオドール®)の供給停止が発表され、喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療にどのような影響を与えるかを概観しました。
今回のコラムでは、実際に医療現場でどのような問題が生じるのか、また、今後の治療選択肢の減少がどのような影響を及ぼすのかについて掘り下げていきます。
1. 医療現場の困惑と患者の不安
✅ 長年テオフィリンを使用していた患者への影響
「これまで問題なく使えていた薬が急になくなる」
患者にとっては、突然の変更は大きな不安要因となります。
特に高齢の喘息・COPD患者では、長年テオフィリンを服用し症状が安定していたケースも多く、新しい薬への切り替えがスムーズに進むとは限りません。
〈患者から想定される主な不安の声〉
🔹 「今までの薬で調子がよかったのに、なぜ変えないといけないの?」
🔹 「他の薬に変えたら副作用が出るんじゃないか?」
🔹 「吸入薬に切り替えるって言われたけど、使いこなせる自信がない…」
2. 供給停止がもたらす3つの大きな課題
① 治療選択肢の減少が招く問題
テオフィリンは、気管支拡張作用に加え、抗炎症作用や夜間症状の軽減といった特性がありました。
そのため、代替薬の選択は単純な置き換えでは済まないケースも多く、次のような問題が生じる可能性があります。
🔸 β2刺激薬(LABA)や抗コリン薬(LAMA)への切り替えが難しい患者
特に高齢者では、吸入薬の使用が困難な場合もあり、経口薬であるテオフィリンの役割は大きかったと考えられます。
🔸 夜間発作の増加
テオフィリンは持続時間が長く、夜間の喘息発作を予防する役割がありました。
これがなくなることで、夜間に症状が悪化する患者が増える可能性があります。
🔸 長期管理の難しさ
一部の患者では、吸入ステロイド(ICS)+LABAの標準治療だけではコントロールが不十分になるケースもあり、医師による治療調整が難航することが予想されます。
② ステロイド依存度の増加による副作用リスク
テオフィリンが使用できなくなることで、喘息患者の治療強化のために経口ステロイド(プレドニゾロンなど)の使用頻度が増加する懸念があります。
しかし、全身性ステロイドの長期使用は、以下のような副作用リスクを伴うため、安易な使用増加は避けるべきです。
🔹 骨粗鬆症(特に高齢者で骨折リスクが上昇)
🔹 高血糖・糖尿病の悪化
🔹 免疫抑制による感染症リスクの増大
🔹 消化性潰瘍のリスク上昇
③ 医療費の上昇と患者負担の増加
テオフィリンは比較的安価な治療選択肢であり、特にジェネリック医薬品の普及により、多くの患者にとって経済的に負担の少ない治療薬でした。
しかし、これが使用できなくなることで、代替として**吸入薬(LABA・LAMA・ICS)や生物学的製剤(デュピルマブ、メポリズマブなど)**の使用が増えると、治療コストが大幅に上昇する可能性があります。
✅ 〈コストの変化イメージ〉
- テオフィリン(ジェネリック) → 1日数十円程度
- LABA+ICS吸入薬 → 1日あたり数百円~
- 生物学的製剤 → 1回数万円の自己負担が発生するケースも
特に高齢者や低所得層の患者にとっては、治療の継続が困難になる可能性があり、医療費負担の増大は無視できない問題です。
3. 代替治療の選択肢はあるのか?
現在、テオフィリンに完全に代わる薬剤は存在しないものの、いくつかの代替策を組み合わせることで治療の移行を図る必要があります。
〈次回のコラムで紹介する代替治療の選択肢〉
✅ 長時間作用型β2刺激薬(LABA)への移行
✅ 長時間作用型抗コリン薬(LAMA)との併用
✅ 吸入薬への移行が難しい患者への対応策
✅ 経口薬による補助療法の可能性(他社のテオフィリン製剤など)
今後、薬剤師としてどのような対応が求められるのか?
次回は、具体的な代替治療の選択肢と、薬剤師の役割について詳しく解説します。
次回予告:「テオフィリン供給停止における薬剤師の対応策」
👉 薬剤師が提案できる代替治療の選択肢とは?
👉 吸入薬への切り替えが難しい患者のフォロー方法
👉 経口薬の可能性を探る!他社製品や併用療法の検討
次回もぜひご覧ください!